ビジネスゲームを用いた経営戦略の展開
経営戦略は複雑性を増してきており、一般の人にとってますます「とっつきの悪いもの」になってきています。
しかし、企業の持続的な成長のためには従業員が経営戦略を理解し、その戦略に沿って動くことが理想的です。
従って、従業員に経営戦略を理解させることの重要性は高まっています。
ここでは、その重要性と、どうしたら従業員が経営戦略を理解してくれるかについて考察し、ビジネスゲームを用いた経営戦略の浸透方法について紹介いたします。
経営戦略とは
まず、経営戦略とはなんでしょうか?
経営戦略とは、
「組織において、その事業体が経営目的を達成できるようにするための方策全般のことを指し、中でも全体の活動の方向となる指標や、また方向づけられた活動を実現できるようにするための体制づくり」
などを指します。
よく比較される、戦術と比較すると、下記の違いがあります。
経営戦術
企業の経営方針や経営戦略の目的を実現するための具体的な施策を表現する経営用語のことで、幅広く使用されています
経営戦略
企業の持続的成長を目指した考え方(思考法)や定義、またはその計画
その全体が経営戦略と一般的に呼ばれており、これは民間企業に限らず、行政体や非営利組織などのあらゆる組織で不可欠だと考えられています
【出典:カオナビ】
つまり、戦術は現場における個別の課題に対するもの、戦略は組織としての方向性と考えられます。
例えば、今、売上が1億円の会社が5億円の売上を目指すために新規の出店を行う、ということは組織の方向性を決めることになります。
従って、これは戦略の領域になります。
そのためには、
- 出店先店舗の従業員を採用する
- 取引先を増やして安定的な供給体制を確保する
- 取扱品目の増加を図る
- 銀行に融資を申し入れる
- 競合店を調査して出店先を決める
などといった様々な対応が必要です。こうした個別具体的な課題が戦術の領域です。
従業員はそれぞれの部署で、戦術目標を達成するための活動を行っていますが、その背景や組織の中での位置づけを理解できている人は少数派でしょう。
先ほどの例でいうと、売上高5億円を目指すための出店であれば、地域に根差し、長期的な信頼関係を構築することが必要です。
しかし、経営戦略が理解できていなければ下記に示すようなことが起こってしまいます。
調達部門に属しているAさんが、「安価で安定的な仕入先」を確保することをミッションとして与えられたとします。
Aさんは、安価な仕入先を探すために様々な調達先を探しましたが、その地域ではいい調達先を見つけられず、「地域外の調達先」を選定しました。
これによって、Aさんが求められていた原価低減の目標は達成できたとします。
この場合、Aさんは目標を達成できて、賞賛を得られるかもしれません。
しかし、地元の製品を取り扱ってくれないことに不満を抱いた地域の協力が得られなければどうでしょう。
出店先地域で信頼が得られなければ、最終的に撤退を余儀なくされ、売上高5億円といったゴールが遠のくことになりかねません。
このように、従業員と経営戦略を共有できていなければ、組織目標と合わない戦術が取られることになりかねません。
そのため、向かうべき方向性や価値観を共有することは大切です。
言葉で書くと簡単ですが、異なる人間同士が結びついた組織でこれを実際に実行するのは困難です。
ベンチャーなどでも、最初は考え方が一致していても、最終的には方向性の違いから別の道を歩く、などということはよくあることだと思います。
経営戦略を従業員に展開する
では、どうしたらこうした価値観を合わせられるのでしょうか?
例えば、あなたが経営者の立場なら、下記のようなことを従業員に指示することはできると考えられます。
同じ経済番組を見てもらう
ある弁護士の方のお話を伺った際に、クライアントと目線を合わせるため、毎日、テレビ東京系のワールドビジネスサテライトを見るように求めていました。
しかし、弁護士とクライアントの立場である社長の関係性は対等ですが、社長と従業員の立場は対等とはいいがたく、また、毎回異なるテーマを扱う経済番組を見ても、従業員と経営者が価値観を合わせることは困難でしょう。
同じ本を読む
では課題図書を設定し、本を渡したらどうでしょうか?
同じ本を読んだ人同士であれば、ある程度、同じ価値観を持ってくれると思います。
しかし、平成30年度の文化庁の調査によると47.3%が1か月に1冊も本を読まないといわれています。
どれだけの従業員が本を読んでくれるか、と考えるとなかなか難しいように思われます。
座学研修やオンラインの研修を行う
それでは、座学やオンラインでの研修を行うやり方はどうでしょうか?
上の二つと比べて、より効果は高いように思います。
しかし、同じインプットをしてもやはりバックグラウンドによって、理解度は異なります。そのため、アンケートをとって理解度を把握しようとするやり方が一般的ですが、主観的な評価しかわからないため、その効果はわかりづらいのが実態です。
従って、このようなやり方で価値観や組織における方向性を共有することは難しい、と言わざるを得ません。
ビジネスゲームのススメ
では、どうしたら従業員に経営戦略を浸透させることができるのでしょうか?
私は、参加者が主催者や周りのメンバーと意見交換をしながら理解を深めていくビジネスゲームを通じて経営戦略を体験するのが一番だと思います。
ビジネスゲームには、下記の効果が期待できます。
- 楽しみながら戦略を体験し、理解することができる
- 部分最適ではなく、全体最適の重要性が理解できる
- チームのメンバーと一緒に参加することでメンバー間が相互に理解する機会となる
つまり、ビジネスゲームは、メンバー間の戦略理解度向上や相互理解を通じたチームビルディングなど、様々な目的を同時に満たすことができます。
また、普段は経営戦術、つまり「目の前の仕事」のことだけで精一杯、その前後の関連性や、組織全体のことを考える視点は持ちづらい従業員の視野を広げ、経営戦略に目線を向けさせる効果も期待できます。
例えば、街作りを行うゲームである「シムシティ」では、街の人口が増えれば子供も増える。だから、先に公園を整備しておくなど、1つの事象から発生する関連項目に目を向け全体最適化を意識する必要があります。
このようにビジネスを俯瞰して全体を見る目を養うといった効果も期待できるのです。
まとめ
経営戦略と経営戦術の違い、そして経営戦略を浸透させるための手段としてのビジネスゲームの重要性について触れてきました。
従業員が目の前の仕事に一生懸命となることは大切です。
しかし、結果として「組織の方向性として間違ったことを一生懸命にやる」ことが結果として、店舗の撤退を招くなど、戦略と合わない努力を重ねると、大きな問題が発生するリスクがあります。
そうしたリスクを防ぐために、ビジネスゲームを研修に取り入れ、一人でも多くの従業員が経営戦略を理解する環境を構築することをお勧めします。
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